産業AI
MistralとNVIDIA、共通の物理評価基準を備えたエンジニアリングAIを計画
MistralとNVIDIAは物理シミュレーション、モデル開発、設計をつなぐ。公開データセット、エンジニアリング評価基準、Omniverse連携を計画する。
MistralとNVIDIAは10月21日、産業エンジニアリング分野での協業を発表した。シミュレーション、AIモデル開発、製品設計を閉じたループで結ぶことを目指す。計画するワークフローは、Mistral Large 4、データ生成、物理モデリングを、NVIDIAのCUDA-XライブラリーとWarpに組み合わせる。NVIDIAが同時に公開した産業向け発表も、Mistralによるこれらの技術の活用を、シミュレーションの高速化とエンジニアリング向けモデル向け訓練データ生成のための計画として説明している。
プロジェクトの大きな柱は、共通の評価基盤だ。両社は物理モデル向けの公開ベンチマークとオープンデータセットを開発し、研究者や産業界のチームが共通の材料で精度と性能を比較できるようにする方針である。コンピューター支援設計からシミュレーションへ移る自動化ワークフローも対象となる。そこでは準備工程と、最終的に得られる物理予測の両方を評価する必要がある。
コンピューター支援エンジニアリングと電子設計自動化におけるエージェントには、別の評価を計画している。ツール使用、複数段階のワークフローの完遂、結果の技術的な正しさを、実行時間や計算コストとともに調べる。航空宇宙、自動車、半導体が対象分野として挙げられた。発表はこれらのベンチマークと連携を共同開発作業として示しており、完成した評価結果や、エンジニアリングのワークフロー全体の提供日は公表していない。
Warpは、この作業に利用できる既存の計算要素を提供する。NVIDIAは、物理計算、AI、最適化を高速化するオープンソースのPythonフレームワークと説明する。Python関数をGPUで実行するコードにコンパイルし、微分可能なシミュレーションに対応することで、シミュレーション結果の勾配を訓練や最適化へ戻せる。PyTorchやJAXとの接続は、シミュレーションコードの細かな制御を保ちながら、数値計算を機械学習の処理に結び付けるのを助ける。
データ生成の課題は今回の協業より前から存在する。NVIDIAの3月の技術記事は、高精度な物理データを作る費用をシミュレーションモデルの訓練における制約と説明した。掲載例ではWarpで二次元の流体ソルバーを構築し、シミュレーションを通じた微分を最適化に使った。これは数値物理からモデル訓練へつなぐ手法がすでに公開されていることを示すが、今回発表されたMistralのワークフローの性能測定ではない。過去の例から、協業全体の高速化倍率が確定するわけでもない。
計画されるOmniverse連携は、GPUで高速化する3DシーンとSimReadyアセットの生成に関わる。既存のSimReady仕様は、OpenUSDを基盤にしたシミュレーション用コンテンツを説明し、メタデータには意味ラベル、センサー属性、剛体特性、質量などを含められる。これらは物体の外観だけでは得られない、シミュレーターに必要な情報を与える。仕様は異なるシミュレーション要件に合わせたアセット設定にも対応するため、計画中の生成作業はエンジニアリング環境の可視化だけでなく、環境を準備する工程にも関係する。
Mistralはすでに5月、Emmi AIが加わったと述べ、物理AIの取り組みを紹介していた。その説明は、ソルバーの出力から学ぶモデルと、シミュレーションデータで訓練した言語モデルを区別する。物理モデルは形状、境界条件、測定値から挙動を予測する。Mistralは学習モデルを反復的な設計探索に位置付ける一方、検証や特殊な事例では従来型ソルバーの役割も残した。今回のNVIDIAとの協業は、その既存のエンジニアリング分野の方針に高速計算と共通評価を追加する。
言語モデル部分は、予定されるエンジニアリング向けベンチマークとは公開段階が異なる。Mistral Large 4は10月6日、Mistral Studioを通じて公開プレビューに入った。発表によると、Mistralが欧州で運営するデータセンターのNVIDIA Grace Blackwell基盤で訓練し、重みは10月末の公開を予定していた。今回のエンジニアリング向け発表は、その重み公開計画を完了済みとはせず、別個の物理モデルが公開されたとも示していない。